ニコニコ動画歌ってみたタグ週間新着動画の推移からみる考察(2013年版)

これはニコニコ超会議・第4回ニコニコ学会βポスターセッションに出展したものネット上に再掲載したものです。普段は週刊ニコニコ歌ってみたランキング というランキング動画を作成しています。


①ニコニコ動画歌ってみたタグ週間新着動画の推移の前提条件

この研究では、2008年11月第3週以降、以下の条件で取得したデータを元に毎週投稿された新着動画のデータのみを用いて数値の集計処理を行った結果を元に分析を行っている。

l 毎週月曜日05時00分00秒~翌週月曜日04時59分59秒の期間にニコニコ動画へ投稿された動画を集計対象としている。

l 以下の方法を組み合わせてニコニコ動画へ投稿された動画の再生数・コメント数・マイリスト数(以下、データ)を取得している。

  1. ニコニコ動画運営が毎週発表している週間ランキングデータから集計対象となる動画を抽出したデータ
  2. ニコニコ動画において”歌ってみた”タグのタグ検索(以下、タグ検索)を前日任意の時間に行い、取得した動画IDを元に月曜日5時時点でニコニコ動画APIのgetthumbinfoから取得したデータ
  3. 月曜日午前3時時点でタグ検索を行い、取得した動画IDを元に5時時点でニコニコ動画APIのgetthumbinfoから取得したデータ
  4. 月曜日午前5時時点でタグ検索を行った検索結果
  5. 月曜日午前5時15分時点でタグ検索を行った検索結果(2011年8月23日以降に遅延して取得できなかった動画があるかどうかを確認する目的で取得)

l 2011年8月23日にニコニコ動画におけるタグを使用した検索のシステムが改良されたことで新着投稿動画のタグ検索への反映が早くなるまでは、新着動画がタグ検索の結果に反映されるまで6時間程度の遅延が発生していた。そのため、2011年8月第4週までのデータには日曜日23時前後~月曜日5時に投稿された動画のデータが欠損している。これに伴って、概ね毎週30~120本程度の動画のデータが取得できていない。なお、2011年8月23日以降は最大で15分程度の遅延となっており、欠損は0~2本の範囲に収まることを確認している。この部分に関しては月曜日午前5時15分時点でタグ検索を行った検索結果からデータを0へ修正して結果に組み込んでいる。

l ニコニコ動画の検索仕様およびニコニコ動画APIのgetthumbinfo仕様では、カテゴリタグとしているかカテゴリタグとしていないかの区別が付かない。そのため、ここで集計しているのはあくまで、毎週月曜日5時の時点に歌ってみたタグが付いていたニコニコ動画にアップロードされている週間新着動画である。

②ニコニコ動画歌ってみたタグ週間新着動画の推移から見る考察

今回の研究では動画投稿数および再生中央値を分析の対象とした。

1.動画投稿数

・歌ってみたの動画投稿数は2009年5月頃からはじまるmagnet男性コラボブームから上昇傾向となり、同年11月のニコニコ大会議全国ツアーによって増加傾向が鮮明となる。

・2011年9月頃にはやや減少へと転じている。この間、再生数の少ない動画が荒れる原因となる出来事の発生した週に極端な投稿数の落ち込みが見られる。

・2010年12月第4週のクリスマス動画投稿ラッシュを挟んで再び増加傾向に転じたが、2011年2月のいわゆる「ニコニコ大惨事」を受けて投稿数の伸び悩みが鮮明となっている。

・ニコニコ大惨事の余波から脱し、再び増加傾向を見せた矢先、東日本大震災が発生、1000本近い投稿の減少が発生した。

・東日本大震災以降は投稿数の増減幅が震災前に比べて著しくなり、2011年末まで横ばい傾向であった。

・2012年に入ると投稿数は増加傾向となり、2012年4月第1週にはこれまでのところ最も多い5,575本の動画が投稿されている。2012年5月以降は一転して減少、クリスマス動画の急増などを除くと2012年末まで減少が続く。2013年に入ると再び投稿数は増加傾向となり、2013年4月第1週には久々の5000本越えとなった。

・これらを踏まえ、歌ってみたカテゴリの投稿本数は年初から年度末までは増加傾向を示し、その後は年末まで徐々に減少していくという仮説を来年にむけて提示しておきたい。

2.再生中央値

・再生中央値が極端に変動しているタイミングの多くでニコニコ動画運営による仕様変更が行われており、まず、ニコニ広告がスタートした2009年3月第3週に極端な落ち込みが発生している。

・magnet男性コラボブームの頃に一旦再生中央値は上昇するが、ブームの落ち着きとともに徐々に減少、2009年10月にはニコニ広告スタート時点とほぼ同じ数値にまで戻っている。

・2009年11月第1週の「世界の新着動画」スタートによって再生中央値は一気に増加するが、コメントが反映されることによる動画への中傷が目立ったことから、いわゆる「世界の新着動画回避」を行う投稿者が増加、再生中央値は5週間急落を続ける。その後、落ち着きを取り戻し、「世界の新着動画」スタート前と同水準まで戻る。

・もっとも極端な再生中央値減少を示したのは検索仕様の変更を行った2010年6月第1週である。この週だけで前週と比較して17も下落している。標準検索結果がコメントの新しい順となり、さらに標準検索結果が1行1動画となったこともあってコメントの付きにくい新着動画は全体的に再生数を極端に落としたものと考えられる。

・2010年6月第1週以降、再生中央値は緩やかな減少を続けていたが、2011年12月第2週に発生したPONPONPONブームの際に投稿されたPONPONPON動画は、再生中央値69となっている。PONPONPON以外の動画で集計した再生中央値は37であり、理由は不明ながらそれまでの様々なブームに比べてPONPONPON動画は再生中央値が極端に多く、それに引っ張られる形で全体にて集計した再生中央値も増加している。

・なお、その後、夜咄ディセイブのブームでは夜咄ディセイブ動画の再生中央値が76となり、千本桜の再生中央値58はもちろん、PONPONPONの再生中央値69をも上回る再生中央値となった。第1四分位は、PONPONPON36、千本桜31、夜咄ディセイブ36とそれほど変わらないが、第3四分位は、PONPONPON227、千本桜140、夜咄ディセイブ258とかなりの差を示した。こちらもこうした異常値が算出された原因は全く不明である。

・2011年12月第3週には直近24時間ランキングが標準となり、カテゴリグループも再編された。これに伴って再生中央値も再編前と比較して10近く増加しているが、これは2010年11月第1週とほぼ同じ水準まで戻ったことになる。

・その後はじり貧傾向が続いており、第3四分位、第1四分位の数字も比較すると上位層は高位安定となっており、下位層でも減少傾向は見られるものの概ね低位安定状況である。中央値のみがじりじりと数字を落とす傾向を続けており、中間層と上位層の差が開きつつあるのが現状である。

③新着動画の再生数増加施策に関する提言

動画投稿者にとって再生数というのは投稿モチベーションを維持するのにもっとも重要な指標である。しかし、動画再生数がもっとも伸びるのは今回データを取得しているのと同じ初動一週間以内、特に投稿から3日程度である。そこで今回分析に使用したデータの再生中央値から新着動画の再生数を全体的に増加させる方策として、昨年とほぼ同文だが以下の提言を行う。

・2010年6月第1週の検索結果仕様変更は新着動画の再生数に重大な問題を引き起こしたことが今回数字から明らかになった。また、2011年6月14日のキーワード検索および2011年8月23日のタグ検索の仕様変更によって新着動画の検索結果への反映が早くなったにもかかわらず、再生中央値のデータ上ではほとんど変化がない。これらの数字から現在の標準検索結果であるコメント新しい順では、再生数上位にいる常連視聴者がコメントを毎日付けている動画が有利であり、見てよかったと感じた新着動画にコメントを付ける層の努力を持ってしても再生数上位の動画には現状かなわないということになる。そして、こうした根本的なところが修正されていないため、新着動画の反映が早くなっても実際には新着動画再生数増には役立っていないことも示している。つまり、ニコニコ動画運営サイドが”できるだけ新着動画の見られる機会を多くしたい=新着動画の再生数を増やしたい”と本気で考えているのであれば、速やかに標準検索結果を2010年6月第1週以前の検索仕様(投稿が新しい順を標準・検索結果複数列表示)に戻すことが重要と考えられる。

・2011年12月第3週に実施された仕様変更は新着動画の再生数に有益な効果をもたらしている。カテゴリの再編に関しては現状ではこれ以上手を打つところはないと思われるが、ランキングに関しては新着動画の再生数増加とともにいわゆる「門番動画」も復活していることが公式カテランのデータから確認できる。そこで毎時ランキングを24時間以内の新着投稿のみにするという施策も重要である。カテゴリ別毎時ランキングが開始されたことによりTwitterなどでは指標として用いられているので、標準で表示される24時間デイリーは過去の門番まで含めたランキングを確認できるように現状を維持しつつ、同カテゴリの毎時ランキングへワンクリックで移動できるようにして新鮮な新着動画の動向を毎時で確認してもらうという棲み分けが一番良いと思われる。ただし、24時間デイリーランキングまで新着投稿のみにしてしまうと過去動画が急に注目された時に確認できない事態が発生するため、あくまで片方のみとすることが重要であるといえる。