少し前に焼酎の一大ブームがありました。だいたい2003年末くらいにはその兆しが現れ始め、最初はけっこうみんな仲良くやっていました。それもそのはずでいままで焼酎なんていうのは労働者が飲むくさい酒と地元ですら敬遠され始めていた酒で、先行きには全くの展望すら見えなかったのです。それがブームで脚光を浴びまして、蔵元も酒販店も飲食店もみんなで一緒にがんばっていこう、という機運がありました。
ブームがだんだん進展していくと業界の中でも勝ち負けが見え始め、勝っているグループの中でも考え方の相違が出てきます。さらに商売に良い頃合いだと大手商社やチェーンの酒販店、巨大ビール会社などが次々と甘い話を持ちかけてきます。そういう話に乗るところやむしろ嫌悪するグループなどが現れ、だんだん分裂の様相を呈してきます。
その過程で何が起こるかといいますと囲い込みです。自分たちのグループが一番良くていいんだということをしきりにアピールし、仲間を囲い込んでいきます。要するに派閥争いです。商売やお金が絡んできますとどうしてもこうした派閥争いは避けられないようで、焼酎界隈でも同じでした。相手の誹謗中傷をしたり、メディアを取り込んで自分たちだけが載るようにしたり、本当にいろいろなことが行われました。
そして、ブームは去りましたが、焼酎業界はどうなったか。確かに見た目の数字では衰退したかのように見えますし、メディアやブームのまっただ中に取り込まれていた人々はみな口々に「焼酎は衰退した」といいます。しかし、実際にはブームの時に生産量を増やしすぎたところが苦境に見舞われているのであって、ブームということを理解して立ち回った蔵やかなり最初の段階で脱落、あるいは最初からブームに巻き込まれなかった人たちの作る焼酎は本当に美味しくなっていますし、楽な経営ではないもののブームの余得もあって、新しいことを試しながら生業として取り組んでいます。そして淡々と美味しい焼酎のことを考え続けています。
地酒ブームの時も同じだったそうで、ブームがたどる過程というのはいつの時代でも変わらないものなのだなあ、と思う次第です。
参考:本格焼酎の楽しみ