アイドルマスターシンデレラガールズ第1クールを通しての感想

アイドルマスターシンデレラガールズ(デレアニ)が前半13話を走りきりました。この稿では、2011年のアニメ版アイドルマスター(アニマス)、劇場版アイドルマスター(劇マス、ムビマス)の展開も踏まえながら、アイドルマスターシンデレラガールズの展開の妙について感想をまとめます。

デレアニは、第一話と第二話で遅れてきたニュージェネレーション三人を物語へと誘い、最近は落とす回にすることの多い第三話で三人に一番早い成功を見せ、そして第六話でその成功を鮮やかなまでに落とした上でプロデューサーの古傷をもえぐり出す。そして第七話で四人を再生させました。プロローグというべき話を実に7話も使って丁寧に描いています。アニマスの時は第一話から第三話で展開された流れを倍以上の時間を使っているのです。アニマスとデレマスでここまでの違いが必要だったのは、既に人間関係のできあがっているアニマス・765プロと全員が一からはじまる関係であったデレアニ・シンデレラプロジェクトという違いが大きいと思います。
765プロはアニメスタート時点で既に半年間の時間が経過しており、メンバー間のコミュニケーションも信頼関係も密になっていました。また、そこへ赤羽根Pが飛び込んでいく物語だったので、メンバー間の信頼関係醸成という物語を描くことなく、個人回を表看板、赤羽根Pとメンバーの間の信頼関係の醸成を主題テーマにした物語を展開できました。
一方、シンデレラプロジェクトは全員が一から関係を構築していく物語です。そのためにはまずメンバー間の個性を描き、メンバー間の信頼関係を描き、メンバーと武内Pの信頼関係醸成をも描く必要があります。この状況で、アニマスの時のようにはじめから個人回を組み合わせながら描いてしまうと物語の主題が多面的になりすぎて、全てが薄くなります。はじめは原作ゲームでも看板ユニットであるニュージェネレーションズの三人をメインに据え、物語の軸を三人と武内P、三人とみく、みくと武内Pに絞ることで軸がぶれないようにしつつ、そこに他のメンバーを適切な場面で絡ませることでそれぞれの個性が判るような展開を用いています。シリーズ全体の構成をしっかりと組み立てていないとこの展開は本当に難しいと思います。
何より驚いたのは第三話、第六話、第七話の物語展開です。一度あそこまで持ち上げた三人を第六話と第七話であそこまで容赦なく落としきる展開はとても予想していませんでした。一歩間違えると物語自体が破綻し、それぞれのファンから非難が集中しかねない展開を描ききった点にむしろアニメスタッフの三人への愛情と信頼を感じました。凜も未央も卯月もこの程度の逆境くらい跳ね返すことが出来る、と。この伏線があってこその13話ファンレターのシーンともいえそうです。
ここで未央について少し。未央はシンデレラプロジェクトの中で一番のムードメーカーです。周囲を見て、いま足りないことがなにか感覚で把握してしまう唯一の存在といえるでしょう。未央は足りないものを直感的に把握してしまうが故にあるべき理想とかけ離れたときにその理想を実現しようとして、すぐに行動します。それが見事にはまると私物持ち込みの時のように他の人が想定もしていなかった見事な提案としてきっちりはまります。ところが把握できるが故に過剰なプレッシャーを感じるときやどうしてもそれがはまらないときがあり、そういう状況の時に動きが取れなくなって固まってしまったり、空回りしたりするのです。長所と短所は表裏一体の関係であるというのはデレアニの中で随所に出てきていますが、未央の描かれ方も全く同じスタンスで描かれているだけだと思います。私は未央Pではないですが、第六話第七話を受けて未央を叩く人がいるというのは本当に残念なことです。13話で見せた成長によって、誤解が解けてくれることを願わずにはいられません。
未央もそうでしたが、このアニメはとことんまで等身大の人間を描く物語としての妥協を許さずに脚本の筋が貫かれているとおもいます。おそらくいまのアニメであれば、1クールラストでまさか12話の流れを回収して美波を倒れさせ、ラブライカとして出演させないなどといった流れは取らないでしょう。でも、現実として、まだ19歳の美波があの立場になったら過大なプレッシャーを受けるのは確実で、当日発熱で倒れるというストーリーはあり得ます。代役として蘭子が登場する場面についても12話合宿での伏線を生かしてあり、視聴者側が「なんで突然」と思わせない仕掛けを随所に打っています。まるで最初に25話を書き、そこからどんどんさかのぼって1話まで書き戻っていった、そんな筋立てです。
そして、等身大の人間像だけでなく、等身大の現状も描いているのも忘れてはならないと思います。13話冒頭、フェス会場の周囲にアイドルユニットの看板がありましたが、実はシンデレラプロジェクトの看板は一枚もありません。今回のフェスで看板を作ってもらえるほどの人気がまだ無いという現実を主役達であるにもかかわらず見せつけています。そして、12話についてもエンディングで765プロのサインとともに「シンデレラプロジェクトご一行様」という立て看板を置いているのは見事な対比でした。765プロは「求められて書いた名前」が掲示してあり、シンデレラプロジェクトは「求めて書いてもらった名前」が書かれています、しかもまとめて。ワンカットで現状の違いをここまで示すのはなかなか思いつかないことです。
その流れでもう一点言及すべき内容としては、過去からの流れ、しかも初見ではのちにそれが拾われて回答が出るとは思えないような内容を丁寧に拾い上げるアニメだということです。例えば、7話で武内Pが未央を説得するために進もうとして入り口の自動ドアに挟まれるシーン、これは2話で未央がエレベーターに乗ろうとして扉に挟まれるシーンからの流れを拾い上げています。未央は2話でこのあとPと合流してシンデレラルームへ向かうのですが、未央が自分で開いて武内Pの所にたどり着いたというモチーフを7話では逆転して武内Pが自分で開いて未央の所へたどり着くという流れにしています。それ以外にも
・1話で武内Pが凜に対して「いまあなたは楽しいですか」と問いかけている返答を13話のラストシーンで凜から「楽しかった。と思う」と返す
・7話の「私全然笑えてないし」という未央のセリフに対して13話で武内Pから未央に対して「いい笑顔でした」と返す
・7話で武内Pがお客様の数は少なかったがその人達が足を止めて歌を聞いて拍手までしてくれていたことを13話のアンケートで証明してみせる
・12話でラブライカが複数人での舞台になれていない蘭子の手助けをしたことが13話で今度は蘭子がラブライカを救うことになる
など、相当数丁寧に前振りとその回収という流れを徹底しています。視聴者は流れでアニメを見ていますからいままでみじんも触れられなかった、あるいは相当わかりにくい触れられ方しかしていなかった内容が突然主軸として明示されると混乱し、物語に没入しにくくなります。もちろん作画はきちんとしているべきではありますが、後半多々怪しい作画状況となっていたデレアニがここまでの高評価を受けているのは、こうした物語の構成がきちんと練られていて、一本筋をちゃんと通したからに他ならないと思います。アニマスも劇マスもそうですが、複数回見ることで初見では気がつかなかったないように気がつき、更に初見でもちゃんとストーリーが理解できるアニメ作品というのはなかなか存在しません。この作品は相当な高クオリティであったといえます。

3か月の間隔を空けて、第2クールがはじまりますが、直接的には13話ラストで登場した原作でトライアドプリムスを構成している神谷奈緒と北条加蓮の登場、初見の女性のシルエットという伏線がどのように展開されるのか、そして第1クールで未回収になっている様々な仕込みがどのように回答を得られるのか、ここまで唯一大きな破綻無く中心になっていない卯月に何らかの展開があるのか、楽しみです。7月からの再開まで、アニマスを楽しみたいと思います。