2025年もあと6時間で暮れようとしております。
おかげさまで、2025年4月には週刊歌らんは850回を迎え、11月には17周年を迎えることが出来ました。そんなこんなで17年以上歌ってみた界隈を第三者的な立ち位置で主に再生数などといった数字を中心にみてきた流れで2025年をざっくりと振り返りますと2025年は
- 年間投稿本数は持ち直すも
- マルチプラットフォーム戦略が重要
- 視聴者の需要と楽曲に変化
といった年でした。
年間投稿本数は持ち直すも
まず、歌ってみたの年間投稿数ですが、49,244本(2024年12月25日午前5時~2025年12月25日午前4時59分59秒に投稿され、2025年12月25日午前5時時点で視聴可能だった動画)となり、2024年の同時期に投稿された動画本数と比較して6,574本増加しました。昨年は約2ヶ月に及ぶニコニコの休止がありましたので当然増加するわけですが、それにしても全体として弱い状況といえます。特に今年は以前ニコニコで投稿していたもののうたスキ動画のニコニコ連携終了とともにYouTubeへ移行されていた方々が戻ってきたことによるカラオケ動画の復調という要因があってもこの増加幅ですので、投稿本数だけで見ても来年に明るい展望を持てる状況ではないといえます。さらに再生中央値も今年の後半には10再生を記録する週が複数記録されました。これはニコニコの長期休止の影響がまだまだ残っているほか、前述のカラオケ動画の復活による再生中央値の引き下げといった要因も含んでいます。
マルチプラットフォーム戦略が重要
七天八十院アエギスさんのニコニコ進出
今年最大の話題といえばやはり七天八十院アエギスさんのニコニコ進出です。
トリリオンステージに所属されているバーチャルライバーである七天八十院アエギスさんは、2025年7月15日にチャンネル登録者13万のYouTubeチャンネルを削除され、新たな動画投稿先として、ニコニコをチョイスされました。ある程度名前の知られたバーチャルライバーであってもニコニコでは再生数などが伸びないケースも多いのですが、曲のチョイスなど様々な要因がよい方向へ行った結果、ニコ動アワード2025において、「歌ってみた部門 ルーキー賞」を獲得するに至りました。12月4日に無事YouTubeのアカウントが復活したようですが、今後もニコニコでの投稿は続けられとよいなあ、と思っております。
歌い手で生きていくのは無理?
また、今年、とあるインフルエンサー的プロ歌い手の方が、「歌ってみたは、なにかの活動をしている人の歌ってみたに変化している」「歌い手で生きていくのは無理」みたいなことを配信されたようで、各所で話題になっておりました。これは、ある意味事実ですが、ある意味間違っています。
YouTubeのみで活動するのであれば、これは事実です。YouTubeはあくまで動画プラットフォームであり、Googleが広告を掲出するために用意されている場所で、クリエイター支援などは一定の人気を持っていない人でないと受けられず、さらにその基準は年々高くなってきています。さらには原因不明のアカウント停止処置に対抗するには、投稿者側も事務所やレーベルなど、Googleに対してもの申せる対抗手段を持っていなければならないのが現実で、そうした手段を持っていない人がいまからYouTubeだけでスターダムに上がっていくのは事実上不可能であるといえます。
しかし、いまは様々なプラットフォームが存在しています。特にニコニコでは、公式企画である「歌ってみた Collection」(以下、歌コレと略)が大盛況です。
開催週の投稿総数は、春が4,124本(昨年は4,250本)、秋が4,316本(昨年は3,369本)と引き続き大きな存在感を示しています。再生中央値も春は86再生、秋は92再生となり、公式企画は極めて順調で、安定しています。歌ってみたは昔から個人のファンになるケースも多い訳ですが、歌コレを通じて知った方のファンになって視聴するケースも確認できており、週次ランキングだけでなく、年間ランキングでも新しい顔ぶれが多数確認できております。歌コレは新しい歌ってみたの登竜門としての役割を確たるものにしたといえます。また、2025年にデビューしたてんぱさんは、TikTokでの歌ってみた動画が注目されて、プロデビューにいたった事例ですが、初のオリジナル曲はご自身で作ったものではありません。
さらにいえば、世の中で活躍している歌手やアイドルなどで、作詞作曲をすべて自分でこなしているいわゆるシンガーソングライターしかいないかといえば、そんなことはありません。作詞作曲をされる方がいて、それらの方々が作られた楽曲を歌うことで生計を立てている人はごまんといます。もちろん芸能人としてプロになっている流れでバラエティ番組などに出るケースもありますが、本業は歌い手です。そうしたことを考えるとやはり「YouTubeだけを見るならば事実だが、視野をYouTube以外にも広げるとそんなことはない」という捉え方がよいかと思います。
マルチプラットフォーム戦略が重要
これらの事実を受けて、以前から私が申し上げているマルチプラットフォーム戦略が重要ということを改めて強調しておきたいと思います。
未だにニコニコだけ、YouTubeだけ、などといったことを主張して、やもすれば片方のプラットフォームを下に見る人たちがいますが、はっきり申し上げてもう時代遅れです。SNSも様々なプラットフォームへ分散が進み、Xだけでは必ずしも広報活動としては不十分となりつつある中で、動画や生配信のプラットフォームもまた分散化が重要な側面です。ニコニコにしか投稿していない人はYouTube、YouTubeにしか投稿していない人はニコニコにも投稿すべきです。また、ニコニコでもショート動画が始まる昨今、TikTokやInstagramのリール動画なども視野に入れる時代になっています。生放送も同様で、YouTubeライブ一辺倒ではなく、ニコニコ生放送やツイキャス、Twichなども検討していく必要があります。
再生数などを冷静に比較するとYouTubeのみで頑張っていた人が歌コレきっかけでニコニコに来たらニコニコではYouTubeよりも再生数が多いなどといった事象も普通に起き始めています。また、インフルエンサー的なプロ歌い手のレベルまで上り詰めたのであればともかく、駆け出しの歌い手が得られる再生時間などでは、YouTubeの収益基準を満たすには果てしない道のりが待っています。ニコニコであれば、クリエイター奨励プログラムを通じて少ない再生数でも一定のポイントが獲得できるので、その点でもニコニコはおすすめできます。
他方、ニコニコにとどまっているのももったいなく、世界に広がっているという点でやはりYouTubeは強いプラットフォームです。動画説明文へ英語を入れるなどの一定の工夫は必要ですが、砂漠から砂金を選るくらいの粒度とはいえ、世界のどこかにいるかもしれない誰かの目にとまる可能性をはじめから捨ててしまうのもまたもったいないといえます。
2026年はぜひ投稿先のマルチプラットフォーム化を検討してください。
視聴者の需要と楽曲に変化
今年もニコニコに原曲がない楽曲は引き続き弱含みである一方で、そこを突き抜けて大きな話題となった楽曲は再生数が伸びる傾向が見えてきたのが2025年の大きな変化です。そのきっかけとなったのは米津玄師さんの「IRIS OUT」でした。9月15日リリースですが、投稿本数もさることながら通常だと再生数が3桁前半くらいの投稿者でも4桁いくなど、視聴者ニーズがここにあったといえる状況です。その点で、極めてもったいない状況だったのが、AiScReamの「愛♡スクリ~ム!」でした。「愛♡スクリ~ム!」の歌ってみたは2025年12月31日現在で実質5本しかありませんが、4本は3桁以上の再生数となっており、おそらくこちらの動画は女性歌い手や両声類歌い手による3人コラボをしていたらかなりの再生数が獲得できていたと思われます。
また、ボカロ曲の歌ってみたに関しても視聴者の需要が再び喚起されつつある点が2025年の変化といえます。きっかけは2024年11月に投稿されたDECO*27さんの「モニタリング」でした。
2025年だけで670本もの投稿がありましたが、全体を通して、再生数が伸びている動画が多かった状況です。DECO*27さんの「モニタリング」を受けて、改めて「ボカロオリジナル曲を歌ってみた」の良さが見直された傾向があり、2026年は「ボカロオリジナル曲を歌ってみた」の動向にも注目すべき状況です。
引き続き録って出しのおすすめ
以下は2024年の再掲ですが、今年もこの戦略はやはり重要でしたので、改めて全文をそのまま記載します。ぜひご一読ください。
こうしたことを書いていますと「クオリティが高い歌ってみたでないと見てもらえない。だからちゃんとした録音をして、MIXを依頼して、動画も依頼して、さらに歌い手に求められているオリジナル楽曲の作詞作曲を自分でしたり、著名ボカロPへ有償依頼したり、ってするとお金も時間も足りないから本数が出せない。」という話が聞こえてくるのですが、ではクオリティが高いと自負されているその動画は、どの程度の再生数でしょうか。さらには歌い手が全員作詞作曲をして、オリジナルMVを作って、一本ごとに様々なコストを支払わないと見てもらえないという事実もありません。こうした「クオリティ恐怖症」ともいうべき状況は数年前に歌ってみたのトップランナーだった方々が残してしまった最大の負債ともいうべき問題ですが、歌ってみたはそこまで肩肘張ってクオリティを重視しなければならないようなものではないのです。実際、今年もほとんど録って出しに近いようなものでも面白かったり、楽しかったり、インパクトがあったり、みんなが求めているものだったりした動画は週刊歌らんの新着ランキング15本に入ってきています。もちろん、歌コレのような多くの注目が集まるような大規模イベントや周年記念動画などはそれなりのコストを掛けてもよい(掛けるべきではなく、あくまで掛けてもよい、ですのでご留意ください)と思いますが、日常投稿に関しては、むしろ視聴者が求める歌ってみたとは何かをリサーチして、見る人たちが見たくなるような、視聴者の需要を満たすものを自分で施したMIXレベルでかまわないので、とにかくどんどんアップロードしていくことの方が大事だと考察します。時には質より量の方が大事なこともあるのです。
ニコニコのリスナーが大きく行動変容している、という点を2023年から書き続けていますが、完全に定着したからこそ、ボカコレアプリによる視聴を意識して、前述のようなMVにこだわりすぎるのではなく、既存楽曲の動画を使わせてもらいながら数を出していくことが重要になってきているともいえます。他の界隈ではいろいろと変化しているにもかかわらず、歌ってみたではボカコレアプリを使っている人に対する意識が薄いようにも見えます。再生数にこだわるのであれば、意識の違いや変化も動画投稿者側は、改めて意識して取り入れていく必要があるのではないでしょうか。
オリジナル曲を投稿されている方へ
また、毎年の繰り返しになりますが、ニコニコはインキュベーターとしての役割を取り戻しています。オリジナル曲を投稿されている方、特にボカロ曲を作られている方は、投稿先をYouTubeオンリーにしてしまうのはあまりにももったいないと思います。YouTubeに広告があふれ、若年層がボカコレアプリへ流出をはじめているからこそ、YouTubeとニコニコの両方で楽曲の展開をはじめる良いタイミングになってきていると分析しています。是非とも2026年からのスタートをご検討ください。
歌い手を応援されている方へ
今年も引き続きのお願いですが、応援している歌い手さんの動画には、ぜひボカコレアプリ上でかまいませんので、いいねを押して、マイリスト登録を行いってください。さらにできればニコニコ動画アプリも入れていただいて、「かんたんコメント
」で良いのでコメントをしていってください。ここがYouTubeなどと異なるところで、ニコニコでは動画に対して行える支援のアクションはこのようにたくさんあります。ぜひ、ニコニコならではの支援を行って、応援している方が投稿した動画やニコ生を盛り上げていってください。
最後に
最後に毎年書いていることですが、引き続き一部で歌ってみたに関する誤った情報が流れている状況がちらほら見受けられます。一応17年以上毎週歌ってみたを数字で見続け、歌い手の皆様の動きなども追いかけ続けている中で、さすがにこれは変ではないかと思った件については各種SNSにて言及させていただいております。
ちなみに投稿される動画や日々の日常配信の多くを雑談やゲーム実況が占めていて、歌ってみた動画はおろか歌枠すらほとんどないのに「歌い手」「歌い手ユニット」と呼称される2.5次元的な方々は、一部のグループが使い始めている「2.5次元アイドル」とかに変更していただいた方がもはや良いのではないか、と愚考する次第です。
今後も歌ってみたに関する誤った情報が流された場合には引き続き、本ブログを含む各種SNSなどで言及させていただきます。
また、様々なデータの提供も私から行うことも可能ですので、もし、歌ってみたの様々な情報を流すWebラジオプログラムやニコニコ公式チャンネルなどをご検討の企業団体、歌ってみたについて記事にまとめたいというメディアなどがございましたら17年以上第三者的な立ち位置で主に数字を中心に歌ってみたを俯瞰してきたものとして、最大限の協力をさせて頂きたいと思います。
2025年の歌ってみた界隈を思うままに書いてみました。見ている位置によって見える風景は違うとは思いますが、17年以上数字を中心に歌ってみた界隈を見続けてきた私にはこんな感じに見えている、ということでご理解いただけますと幸いです。さて、2026年の歌ってみたは果たしてどんな景色となりますでしょうか。それでは、皆様引き続きよろしくお願いします!


