2023年の歌ってみたタグ界隈に関する雑感

歌ってみた年次レビュー歌ってみた動画データ分析ニコニコ動画関連各種考察
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2023年もあと6時間で暮れようとしております。
おかげさまで、2023年3月には週刊歌らんは750回を迎え、11月には15周年となりました。そんなこんなで15年以上歌ってみた界隈を第三者的な立ち位置で主に再生数などといった数字を中心にみてきた流れで2023年をざっくりと振り返りますと2023年は

  • 年間投稿本数が激減
  • 公式企画は順調
  • 歌コレで注目されたモリスレイさんの活躍
  • 視聴行動の大きな変革
  • 需要と供給のミスマッチ

といった年でした。

年間投稿本数が激減

まず、歌ってみたの年間投稿数ですが、56,417本(2022年12月25日午前5時~2022年12月25日午前4時59分59秒に投稿され、2023年12月25日午前5時時点で視聴可能だった動画)となり、2022年の同時期に投稿された動画本数と比較して30,231本減少しました。
2回行われた歌ってみた Collectionや各種ユーザー企画投稿祭による投稿増加はあったもののうたスキ動画関連の動画がまるまる無くなったことによる影響(例えば、2021年末集計時点では年間約5,333本の新着動画が存在していた)が大きかったほか、後述の公式企画などにあわせた準備をじっくりと行うために日常投稿を減少させているケースも多く出ていることを観測しています。

公式企画は順調

投稿数が大幅に減少する中でも公式企画は比較的順調に推移しており、特に「歌ってみた Collection」(歌コレ)開催週の投稿総数は、春が3,358本、秋が3,233本とかなりの存在感を示しています。しかし、それ以外の週は、2023年9月第4週には768本を記録するなど、大きく投稿本数を減らしている状況です。
ただし、再生中央値は昨年とほぼ変わらずに推移しており、数字上、視聴者は一定数しっかりとついていることは言及しておきたいと思います。
なお、「はろー!にゅ〜みゅーじっく!」内で展開されている歌ってみた課題曲ランキングは、知名度の問題からか参加者に伸び悩みが見えており、番組側は知名度の向上、歌い手側はこのランキングに参加することによって知名度を上げるといった、広い視点での活用が求められています。特に歌い手側はニコニコのコア層へアピールするという意味でもこの企画への参加が強く求められます。実際、この課題曲ランキングへ欠かさず参加しつつ、日常の配信や投稿なども行った結果、週刊歌らんのランクイン常連となり、歌コレでも2023秋ルーキー部門15位に進出した芽々子ஐさんニコニコ大百科へのリンクという実例も出ております。

歌コレで注目されたモリスレイさんの活躍

投稿者個別としては、なんといっても今年はモリス レイさんの活躍が大変に大きく目立った年となりました。私が作成した年間ランキングでもかなりの本数が入賞しており、各種メディアにも取り上げられることが増えたなど、存在感が一気に増した一年となりました。ニコニコが新しい才能のインキュベーターとして、十二分に使える存在であることが判明したともいえます。

視聴行動の大きな変革

さらに今年のトピックとしては、ニコニコのリスナーが大きく行動変容している、という点です。
そのきっかけは2022年9月末にNicoBoxがボカコレアプリへと名称を変更したことです。名称の変更以降、週刊歌らんですらボカコレアプリでの視聴が明らかに増加しており、ボカロや歌ってみたのリスナーがボカコレアプリによる視聴へと移行している様子がうかがえます。また、広告が日に日に増えているYouTubeを嫌って、広告が出ず、キャッシュによるギガの節約が可能なボカコレアプリを使う小中学生が増加しつつあります。その結果、マイリストへ入れた動画をボカコレアプリにおいてどんどんループするという行動が多く見られ、歌らん年末特番でも全体的に再生数の伸びが大きく、特に過去動画が改めて、ボカコレアプリにおいてマイリスト登録され、再生されているとしか思えない数字の動き方をしている状況が観測できています。
明らかにリスナーの動きが変わってきている状況といえますが、最近のニコニコ運営は、精度の高い予測データによる改善アクションを計画した上で、所謂「PDCA」をしっかりと回している状況が見受けられるので、おそらくは様々な分析と見通しを踏まえた上で、今後ニコニコが生き残っていくために必要な行動変容をボカコレアプリという形でリスナー側へ促した可能性が高いと推察しています。この傾向が続くのかどうかは来年も注視していきたいと思います。

需要と供給のミスマッチ

こうした状況の中で、昨年に増して大きく目立ったのが、歌ってみたリスナーの需要を充たす供給を歌い手側が出来ていない現状です。今年、よく歌われたランキングに入っていた楽曲は、歌い手側が歌ったものがランキングとして現れたものですが、エンディングのリストなども比較していただくと判るように年末の新着ランキングにはあまり歌われていない楽曲が相当数上位にランクインしています。また、楽曲によっては、30本程度ある歌ってみたのほぼ全てが3桁再生、上位10本に至っては4桁再生、しかも著名な歌い手はほぼ歌っていない、という状況、つまり、聴きたい人は多いのに歌ってみたの供給がなく、既に投稿されている動画を多くの人がループしているというアンバランスな状態も生じています。
再生数を一切気にしないということであるならばそれでも問題ないのですが、「ニコニコでは再生数が伸びない」と公言されている人は、「ニコニコにいるリスナーが求めている需要を満たしていますか?もしやニコニコの歌ってみたリスナーの需要を無視して自分が好きで歌った歌が再生数が伸びないという点でニコニコを批判していませんか?」という点を改めて確認すべきではないかと強く求めたいと思います。
かつては、歌い手の歌いたい楽曲がそのままリスナーの聴きたい楽曲であることが多く、それはボカロ曲を好きな人がそのまま歌ってみたも好きで、流行り物を歌ってみたでも聞きたいというリスナー側の志向が存在していたことが大きな要因でした。ここにはボカロの音声に慣れていない人が好きな楽曲を人の声で聞きたいと考えていた、という需要が多数含まれていることも指摘しておかねばならない事実です。
しかし、いまは「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(プロセカ)が存在し、クリプトン系のボカロを使用した曲を中心に様々なボカロ曲がプロの声優による歌唱で楽しめる時代に突入しています。また、初音ミク誕生から16年を経て、合成歌声も当たり前になってきており、「ボカロ曲をアマチュアでも良いから合成歌声ではない人の歌声で聴きたい」という需要は相当数減ってきているのが実情です。
こうした時代の中でいままでと同じようにやっていても新しい需要が取り込めないのは当たり前の話で、いまの歌ってみたリスナーが求めているものを貪欲に見つけていくことが重要になってきています。それは、ボカコレ上位楽曲をいち早く歌って世の中に出すことであり、替え歌やネタ曲に挑む姿勢であり、歌ってみたの投稿本数が少ないのにそのほぼ全てがたくさん再生されている「歌ってみたを聴きたい人が多くいる楽曲」を見つけることであり、歌コレへ参加することであり、はろみゅ歌ってみた課題曲ランキングに毎回顔を出すことであったりするのです。座したまま、流行っている楽曲の中から好きな曲を歌って、アップロードすればみんなが見てくれる、そんな時代は過ぎ去った、いま多くの人に見られたいのであれば自助努力が重要だということを理解することが重要ではないでしょうか。

オリジナル曲を投稿されている方へ

また、昨年の繰り返しになりますが、ニコニコがインキュベーターとしての役割を再び取り戻しつつある状況であることを踏まえるとオリジナル曲を投稿されている方、特にボカロ曲を作られている方は、投稿先をYouTubeオンリーにしてしまうのはもったいない時代に突入したというのは断言しておきたいと思います。実際、両方に投稿しているYOASOBIさんは「アイドル」で世界を制覇しました。YouTubeに広告があふれ、若年層がボカコレアプリへ流出をはじめているいまこそ、YouTubeとニコニコの両方で楽曲の展開をはじめる良いタイミングになってきていると分析しています。是非とも2024年からのスタートをご検討ください。

歌い手を応援されている方へ

歌い手を応援されている方々のアクションがだんだん薄くなってきているのは今年も感じられました。公式ニコ生へ出演した際にも申し上げておりますが、応援している歌い手さんがいるのでしたら、再生するだけでなく、いいねを押して、マイリスト登録を行い、さらに「かんたんコメントニコニコ大百科へのリンク」で良いので毎回コメントをしっかりと残していく、というアクションが重要です。YouTubeにおいてリスナーが該当動画に対して応援の側面から出来ることは、ほぼ再生することのみで、あとはSNSなどでの拡散しかないため、とにかく再生をされる方が多いのではないかと思いますが、ニコニコでは動画に対して行える支援のアクションは前述のようにたくさんあります。ぜひ、ニコニコならではの支援を行って、応援している方が投稿した動画やニコ生を盛り上げていってください。

最後に

最後に毎年書いていることですが、引き続き一部で歌ってみたに関する誤った情報が流れている状況がちらほら見受けられます。一応15年以上毎週歌ってみたを数字で見続け、歌い手の皆様の動きなども追いかけ続けている中で、さすがにこれは変ではないかと思った件については各種SNSにて言及させていただいております。なお、歌ってみたよりも別の活動をされている2.5次元的な方々を「歌い手集団」などと呼称される向きがありますが、正直なところ、歌ってみたの現状からかけ離れているので、そろそろ別の呼称へ変更していただいた方が良いのではないか、と愚考する次第です。今後も歌ってみたに関する誤った情報が流された場合には引き続き、本ブログを含む各種SNSなどで言及させていただきます。

また、様々なデータの提供も私から行うことも可能ですので、もし、歌ってみたの様々な情報を流すWebラジオプログラムやニコニコ公式チャンネルなどをご検討の企業団体、歌ってみたについて記事にまとめたいというメディアなどがございましたら15年以上第三者的な立ち位置で主に数字を中心に歌ってみたを俯瞰してきたものとして、最大限の協力をさせて頂きたいと思います。

なお、2023年には以下の配信においてご協力させていただいております。よろしければご覧いただければ幸いです。

2023年の歌ってみた界隈を思うままに書いてみました。見ている位置によって見える風景は違うとは思いますが、15年以上数字を中心に歌ってみた界隈を見続けてきた私にはこんな感じに見えている、ということでご理解いただけますと幸いです。さて、2024年の歌ってみたは果たしてどんな景色となりますでしょうか。それでは、皆様引き続きよろしくお願いします!

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