アイドルマスターシンデレラガールズ・美城常務は本当に無能な悪役なのか

美城常務はアイドルマスターシンデレラガールズで第2クールから登場した経営側の人です。アイドル事業部の統轄重役に就任し、これまでの方針を大転換する方向性を打ち出しています。結果として、悪役状態になっていますが、本当に美城常務は単なる無能な悪役なのでしょうか。

結論からいうと単なる悪役ではなく、「コミュニケーション不足」によってこの状況が引き起こされている、と考えます。

この結論に至る最大のヒントは「電撃 – アニメ『アイマス シンデレラガールズ』1stシーズンを振り返る。フィルムに隠された伏線と緻密な設定とは【周年連載】」に出てきています。該当箇所を引用すると以下の通りです。

──以前のインタビューでは“こういう物語にしたい”というテーマがあるとうかがいましたが、1stシーズンでのテーマはズバリ何だったと言えるのでしょうか?

鳥羽:“コミュニケーション”です。『アイドルマスター』というのはアーケードゲームのころからコミュニケーションのゲームなんですよね。

1stシーズンのテーマとして取り上げていますが、この流れは2ndシーズンでも変わっていません。第14話の佐久間まゆの一件からしてこのテーマが引き続き描かれていることが判ります。シンデレラプロジェクトのメンバーはコミュニケーションの取れている状況となりましたが、それはあくまでプロジェクト内の話。346プロアイドル事業部全体のコミュニケーションが取れている状況に至っていません。15話で楓が美城常務の誘いを断った話も誰もが理由を捉えあぐねている状況でした。2ndシーズンではおそらく346プロ内で一番コミュニケーションが取れ、一致団結しているシンデレラプロジェクトが核になり、それ以外のアイドルたちのコミュニケーションが取れるようになって、346プロのアイドル部門が一致団結していく物語がテーマの一つとして描かれる、ということだと思います。14話以降、ストーリーの展開が「他プロジェクトのアイドル×シンデレラプロジェクトメンバー」という描かれ方をしているのが何よりの証拠です。そしてこの描かれ方は事前に明かされていた「全員主役」というキーワードにもつながっていくのでしょう。

そのように考えるともう一つのキーワードであったMJこと美城常務もまたコミュニケーション不足がキーになっていることが判ります。今西部長に「早急すぎる」といわれてなおその考えを曲げない背景には、何らかの大きな問題が横たわっているのでしょう。何もかもが上手くいっている状況であれば、改革などする必要はありません。彼女だけが改革を必要としている現状を把握している中で、周囲にはその現況を伝えることなく、自分に従えば良いという姿勢で動いています。結果、なぜ美城常務はこんなにも改革に焦り、急ぐのか、誰にも全く見えない状態です。そのことは346プロ内に混乱を招き、不信感だけが増していく状況を発生させています。まさに1stシーズンの武内Pとシンデレラプロジェクトメンバーの関係に酷似している状況です。視聴者もまた混乱したこの状況に巻き込まれています。それが様々な憶測や分析を想起させる要因となっているばかりでなく、美城常務叩きが引き起こされる状況をも生んでいます。全てはコミュニケーション不足が招いている惨状です。

ただ、これは制作サイドも意図的に美城常務へ視聴者のヘイトが集まるように仕向けている側面もあると思います。だからこそ、アニメオリジナルの美城常務という存在を作り出し、さらにそうした状況にも耐えられるベテラン声優田中敦子さんを起用したのでしょう。とはいえ、アニメのアイドルマスターでは明確な単純悪役で終わってしまうケースはこれまでない状況でした。一番の悪役設定であった黒井社長も21話で無意味に765プロを叩いているわけではなく、高木社長との様々な葛藤や軋轢による考え方の違いがこの状況を生み出してしまったことが示唆されました。単なる悪役として終わらず、視聴者の中にどこか少し憎めない部分を残したことは、ニコ生のアンケートで「大変良かった」が96.1%を超えなかったときに「黒井社長の陰謀」というコメントが流れることでも判ります。もちろん原作ゲーム側の印象があり、「アニメは黒井社長を単なる悪役に堕した」という評価があることは承知していますが、アニメの影響がかなり大きい現状で、本当に嫌われる単純な悪役だったらもはや触れられることすらないとも思います。

そうしたことから美城常務に関しても今後アイドルの笑顔を消してまで早急な改革を実施してしまうのか、背景が明らかになる場面が来るはずです。もしかしたらそれが卯月か凛の葛藤と結びついていくのかもしれません。そしてそれは2ndシーズンの山になっていくものと思われます。

今後の展開がどうなるのか、楽しみに見守りたいと思います。